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スモールM&AのDD(調査)チェックリスト|賃貸借・許認可・人材・数字の5大項目を解説

スモールM&Aという言葉が一般的になり、個人や小規模法人が会社を買い取る「サラリーマン社長」も増えてきました。しかし、いざ意中の会社(案件)を目の前にすると、多くの人が「どこをどう見ればいいのか」という迷宮に迷い込むことでしょう。いわゆるデューデリジェンス(DD)ですが、大企業が行うような数千万円もかける精緻な調査は、小規模案件では現実的ではありません。

そこで今回は、現場の「生の手触り」を重視した、スモールM&AのためのDDチェックリストをコラム形式で解説します。教科書通りの綺麗事ではなく、失敗したくないあなたが最低限押さえるべき「泥臭い」ポイントに絞ってお伝えしましょう。

1. 賃貸借契約:その場所で商売を続けられるか?

小規模事業、特に飲食店やクリニック、美容室などの店舗型ビジネスにおいて、最も致命的なリスクは「場所」にあります。財務諸表をいくら眺めても、明日その場所を追い出されたらビジネスは成立しません。

まず確認すべきは「チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項」の有無です。これは、経営権が変わる場合に貸主の承諾が必要、あるいは契約解除の理由になるという条項です。売主が「大家さんとは仲が良いから大丈夫」と言っても、それを鵜呑みにしてはいけません。契約主体が変わる際、家賃が大幅に吊り上げられたり、多額の名義書き換え料を要求されたりするトラブルは多く発生しています。

また、原状回復費用の積み立て状況も重要です。退去時に数百万円の請求が来る爆弾を抱えていないか、契約書上の返還義務を執拗に確認しましょう。こうした不動産にまつわる落とし穴は、起業時だけでなく買収時にも共通する課題です。

あわせて読みたい:失敗しないための経営の基本

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スモールM&Aとは?─中小企業・個人事業主のための入門ガイド

2. 許認可:営業の「免許証」は引き継げるのか?

ビジネスには「それがないと営業できない」という免許が存在します。飲食店なら保健所の許可、リサイクルショップなら古物商許可、建設業なら建設業許可です。

ここで初心者が陥りやすい罠が、「会社を買えば許認可も自動的についてくる」という勘違いです。株式譲渡であれば法人の人格が変わらないため継続できるケースが多いですが、事業譲渡の場合は原則として「新規取得」となります。

特に注意が必要なのが、許認可の要件となっている「管理責任者」の存在です。その資格を持っているのが引退する現社長一人だけだった場合、買収した瞬間に営業停止に追い込まれます。後継となる資格保持者がいるのか、あるいは外部から招聘する必要があるのか。ここを確認せずに判を突くのは、運転免許を持っていないのに車を買うようなものです。

3. 人材:辞められて困る「キーマン」の心の内

小規模企業において、従業員は単なる労働力ではなく、企業そのものです。特に「あの人がいるからこの店に通う」という顧客がついている場合、そのスタッフが辞めることは売上の消失を意味します。

DDでは、雇用契約書の有無はもちろんですが、それ以上に「人間関係の相関図」を読み解く必要があります。現社長に対する忠誠心だけで残っているスタッフはいないか、あるいは社長交代を機に「自分も潮時だ」と考えているベテランはいないか。

ゼロから組織を作り上げる苦労を肩代わりできるのがM&Aの最大のメリットですが、それは「今のスタッフが残ってくれること」が大前提です。

4. 評判:デジタルとリアルの「裏の顔」

現代のM&Aにおいて、Googleマップの口コミやSNSの評判を確認しない人はいないでしょう。しかし、それだけで満足してはいけません。

チェックすべきは、「悪評の質」です。サービスに対する改善可能な不満(掃除が行き届いていない等)であれば伸び代になりますが、地域コミュニティでの「あそこの社長はガラが悪い」「支払いが遅い」といった根深い悪評は、買収後にあなたの首を絞めます。

また、取引先との関係性も重要です。主要な仕入れ先が、実は現社長の個人的なツテで安く仕入れていた場合、オーナーが変わった途端に仕入れ価格が跳ね上がるリスクがあります。評判とは、消費者から見た顔だけでなく、業界内での「取引相手としての顔」も含めて調査すべき項目なのです。

5. 数字:確定申告書と「実態」の乖離を埋める

最後にようやく数字の話です。小規模事業の財務DDで最も大切なのは、「営業利益の正常化」という作業です。

節税対策として社長の個人的な経費(交際費や車両費)が過分に含まれていないか、逆に、社長が自分の給料をゼロにして利益が出ているように見せていないか。これらを精査し、「自分が社長になった時に、実際にいくら手元に残るのか」を算出します。

項目 確認すべきポイント 注意点
売上高 季節変動や特定の顧客への依存度 帳簿外の現金売上がないか(税務リスク)
売上原価 仕入れ値の妥当性 社長の個人的なルートによる特別価格の有無
人件費 残業代の未払いがないか 家族従業員への過剰な給与や名ばかり役員

数字のDDは、単なる過去の答え合わせではありません。未来のキャッシュフローを予測するための「仮説検証」なのです。

さいごに:DDは「愛」と「疑い」のバランス

デューデリジェンスを徹底すると、必ずと言っていいほど「欠点」が見つかります。そこで「この案件はダメだ」と切り捨てるのは簡単ですが、それではいつまでも社長にはなれません。

大切なのは、「見つかったリスクを、価格交渉の材料にするか、あるいは自分で解決できる課題として受け入れるか」を判断することです。完璧な会社など売りに出されません。あったとしても、あなたの手の届かない金額でしょう。

小規模DDの真髄は、相手をやり込めることではなく、あなたがその会社を引き継いで「幸せになれるかどうか」を見極める対話にあります。

 

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