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ノウハウ(店舗)

焼き鳥屋の出店計画──“串一本”で勝負するなら、計画にこだわれ

焼き鳥屋の出店は、比較的少ない初期投資で開業できるというイメージがあり、飲食業の中でも人気の高いジャンルのひとつです。実際、居酒屋業態の中でも「焼き鳥屋」は根強い需要があり、ファンの多い分野でもあります。しかしその分、競合も多く、思いつきや勢いだけで開業してしまえば、長続きしないリスクも高まります。ここでは、焼き鳥屋の出店を成功させるためのポイントをご紹介します。

 

1.立地選びは「通行量」より「目的性」に着目する

焼き鳥屋は、ランチ中心の飲食店と異なり、主な来店時間が夕方以降となるため、夜の動線に着目した立地選びが鍵となります。単に人通りが多い場所ではなく、「仕事終わりの一杯」を求める層が流れてくる路地裏や、駅からの帰宅動線上にあるような立地が狙い目です。

また、周囲に同じような焼き鳥屋や居酒屋がある場合でも、「競合が多い=避ける」ではなく、「この立地でなぜ流行っているのか」を調べ、そこに勝機を見出す視点も重要です。立地調査では、平日と週末の人の動きの違い、近隣企業の就業時間、近くの飲食店の回転率や滞在時間など、実際に現地で観察することをおすすめします。

 

2.明確なコンセプト設計が「差別化」の決め手

焼き鳥屋は多く存在するからこそ、“何が他店と違うのか”を明確に打ち出す必要があります。コンセプト設計では、まず「どんな客層に来てほしいか」を明確にしましょう。たとえば以下のように具体化すると、店づくりがスムーズになります。

・サラリーマンが仕事帰りにふらっと立ち寄る一人飲み向けのカウンター中心店
・家族連れも安心して利用できるテーブル中心の焼き鳥食堂スタイル
・若年層向けにクラフトビールや日本酒とのペアリングを提案するモダン焼き鳥バル

コンセプトが決まることで、メニュー、価格帯、店内の雰囲気、接客スタイルまですべての方向性見えてきて、店に「個性」が宿ります。競争が激しい焼き鳥業界で埋もれないためには、個性が必要です。

 

3.厨房と導線設計は「焼き台」が中心

焼き鳥屋の厨房設計では、焼き台(焼き場)の配置が最も重要です。煙の処理(換気・ダクト)、スタッフの動線、お客様との距離感など、焼き台を中心に店全体が設計していきます。

とくにカウンター業態の場合、焼き手の所作そのものが“演出”になります。火と煙、焼ける音、香り、串を返す動きが、料理の一部としてお客様の体験に繋がるような店づくりが求められます。そのためにも、焼き場の位置と視界、そして客席との距離感は、出店計画の段階でしっかり検討したいポイントです。

 

4.仕入れと仕込みの体制を構築する

焼き鳥は食材がシンプルなだけに、「素材」と「仕込み」の良し悪しがダイレクトに伝わります。信頼できる鶏肉の仕入れ先を確保するだけでなく、串打ちの技術、仕込みにかける時間、タレや塩の調合などが店舗の評価に直結します。

串を毎日手打ちするのか、半製品を使うのか、朝から仕込みをする人材を確保できるかなど、出店前からの業務設計と人材確保が必要です。特に開業直後はクオリティのブレが命取りになりやすいため、計画段階から安定した仕入れ体制とオペレーションを準備しておくことが推奨されます。

 

5.価格設定と利益率のバランス感覚を持つ

焼き鳥は1本100〜300円程度の商品が中心のため、原価率のコントロールが経営の肝となります。希少部位や国産銘柄鶏などを使う場合、品質と価格のバランスをどう取るかは非常に重要な判断です。

また、「1本単価が低い=客単価が上がりにくい」ため、ドリンクでの利益確保も見据えた設計が必要です。焼き鳥と相性の良い日本酒・焼酎、またはレモンサワーなどの強化も一案です。さらに、セットメニューやコース料理などで客単価の底上げを図ることも効果的です。

 

6.オープン後の販促とリピート戦略を練っておく

「気軽に何度も行きたくなる」ことが焼き鳥屋の理想の来店動機です。そのため、リピートを意識した販促戦略を最初から用意しておくことが重要です。

オープン時にはチラシ配布やSNSの活用、地域の情報誌掲載などで認知を広げ、口コミを促す仕組みを整えるとよいでしょう。また、来店時に次回使えるサービス券、LINE登録によるドリンク無料クーポンなどを提供し、「2回目の来店」をいかに自然に誘導するかが勝負になります。

焼き鳥屋の客層は、気に入れば週1〜2回ペースで来る常連に育つ可能性があるため、初回来店後のアプローチ設計が非常に重要です。

 

7.焼き鳥屋の出店は「串一本に込める設計力」がすべて

焼き鳥屋は一見シンプルな業態ですが、その裏には「立地」「厨房設計」「人材」「仕入れ」「価格」「販促」など、成否を分ける要素が多くあります。とくに出店前の計画段階でどれだけ細部まで設計できるかが、開業後の安定と成長を左右します。

 “串一本で勝負する”という世界観を形にするために、徹底した準備を重ねること。その積み重ねが、街に長く愛される焼き鳥屋の礎となるでしょう。

 

 

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