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ノウハウ(M&A)

これで納得!M&A買収価格の決定プロセスを徹底解説

買収価格決定の基礎知識と重要性

買収価格がM&Aに与える影響

買収価格は、M&Aの成功を左右する重要な要素のひとつです。この金額が妥当であるかどうかにより、売却後の企業のパートナーシップや経営方針が影響を受けることもあります。価格が不適当である場合、買い手が期待する利益や将来性を損なうリスクがあります。一方、譲渡価格が適正でれば、買収企業と売却企業の双方が納得し、M&Aを円滑に進めることができるだけでなく、その後の協力関係が強固になる可能性が高まります。

 

適切な価格決定が取引成功に重要な理由

買収価格を、売り手と買い手が共に納得する額で合意することは、信頼関係の構築に繋がるということは想像に容易いでしょう。一方、不当な価格設定が行われたり、どちらかの主張に偏った価格となる場合、スムーズな交渉が難しくなるだけでなく、契約後にも不信の芽を生む可能性があります。
価格決定を適切に行うことは、買収後の企業価値向上やシナジー効果の最大化につながり、中長期的な成功確率を高めることになります。そのため、価格決定においては信頼性の高い査定方法や十分な情報収集が重要となります。

 

買収価格の基本的な考え方とは?

買収価格の決定方法は、企業ごとの経営状況や市場環境によって異なりますが、主に「純資産」「将来的な利益」「市場価値」「無形資産」といった要素を基準に検討されます。たとえば、簿価や時価をベースに評価するコストアプローチ、市場の類似企業のデータを活用するマーケットアプローチ、将来の収益をもとに評価するインカムアプローチなど、さまざまな査定方法が用いられてます。また、企業固有の条件やM&Aによるシナジー効果を考慮することも重要です。具体的には、業績が安定している場合や市場で高いブランド力を保持している場合には高値がつきやすくなります。
適正価格を見極めるためには専門知識が必要となりますので、専門家のサポートを得るのが良いでしょう。

 

買収価格決定における実務プロセス

デューデリジェンスの重要性と具体的な内容

買収価格を適切に決定するためには、デューデリジェンスが不可欠です。デューデリジェンスとは、企業の実態や課題を把握するための詳細な調査を指します。具体的には、財務状況の確認、法的リスクの洗い出し、事業運営体制の評価などです。このプロセスにより、売却金額や買収価格の適正性が明確になっていきます。

財務に関するチェックでは、純資産や過去の営業利益などが査定方法の一部として用いられます。また、無形資産や将来の収益性に基づくインカムアプローチも重要視されます。このように、デューデリジェンスは企業価値を正確に把握し、価格交渉を円滑に進めるための要となる工程です。

 

買収価格設定における成功事例と落とし穴

実際の交渉成功事例:価格設定のポイント

適切な買収価格を設定するためには、単なる査定に留まらない視点で企業価値を考えていくことが不可欠です。たとえば、中小企業のM&Aでよく採用される「時価純資産+営業利益の複数年分」を基準に価格を算定した、ある事例では、売却希望額と買収希望額に大きな乖離があったものの、売り手が見込まれる利益のシナジー効果を具体的にアピールした結果、双方が納得できる価格に落ち着いたというケースがあります。このように、将来の成長可能性や付加価値を議論に取り入れることが、成功の鍵となります。

 

価格の過大評価・過小評価が招くリスク

買収価格の過大評価や過小評価は、M&Aプロセスの失敗につながる大きな要因です。過大評価の場合、買い手企業は投資回収が困難となり、経営リスクが増加します。一方、過小評価では、売り手企業が見込まれる利益を正当に評価されず、売却後に後悔する可能性があります。たとえば、無形資産や市場でのブランド価値が過小評価された事例では、売却後にその重要性が再確認され、結果として買い手企業が予想以上の利益を得る一方で、売り手が不満を抱えることになったケースもあります。

 

買収価格決定後に起こりうる課題とは

買収価格決定後にも、取引にはさまざまな課題が潜んでいます。一例として、買収価額に合意した直後に、デューデリジェンスで想定外の財務リスクや法的リスクが発見されるケースがあります。また、買収後に統合がスムーズに進まず、予測していたシナジー効果が得られないことも多く見られます。特に、従業員や取引先との関係調整が不十分だと、企業価値が減少するおそれがあります。そのため、価格決定後も、綿密な事後対応プランを立てることが肝心です。

 

M&A成功のためのアドバイス

M&Aを成功させるには、買収価格の決め方やプロセスそのものに詳しい専門家の助言を受けることが不可欠です。価格を適正に算定するためには、複数の査定方法を採用し、企業の特性や市場の動向を考慮することが求められます。また、プロの仲介会社が関与することで、公平な立場での交渉が可能になり、不公平感や交渉コストの低減につながります。特に、売却金額の決め方や適切な査定方法を熟知した専門家であれば、重要な要素の漏れやリスクを未然に防ぐことができるでしょう。
価格決定にあたっては、売り手と買い手の双方が納得する取引を目指し、パートナーシップの観点で取り組むことが重要です。