飲食店の売上と家賃の関係性とは?失敗しない物件選びのために知っておくべきこと
飲食店経営において、「売上」と「家賃」のバランスは非常に重要です。立地の良い物件を選べば集客しやすい反面、家賃が高騰するリスクもあります。一方で、家賃を抑えようとして立地を妥協すると、今度は売上が伸び悩むことにも繋がりかねません。
では、飲食店の家賃は売上に対してどれくらいが適正なのでしょうか?また、物件を選ぶ際にどのような基準を持つべきなのでしょうか?
本記事では、物件選びや収支計画の立て方について解説します。
家賃は「売上の10%以内」が基本ライン
一般的にいわれているのが「家賃は売上の8〜10%以内に収めるのが理想」という基準です。これは飲食店の固定費の中でも、家賃が大きなウェイトを占めるからです。
例えば、月商が300万円の飲食店であれば、家賃は30万円以内に収めたいところ。これ以上になると、利益を圧迫しやすくなります。特に原材料費や人件費が高騰している昨今では、家賃の比率が少し高いだけでも経営を圧迫する要因になります。
目安として使える「FLR比率」
飲食店では「FLR比率」という指標が使われることがあります。
F(Food)=原材料費(理想:30〜35%)
L(Labor)=人件費(理想:25〜30%)
R(Rent)=家賃(理想:8〜10%)
この3つの合計が70〜75%以内に収まっているのが、健全な経営とされています。逆に、80%を超えるようだと、経営が苦しくなりやすいため注意が必要です。
家賃が高くても成功する立地とは?
もちろん、「家賃は安い方がいい」と一概には言えません。場合によっては、高家賃でも十分な売上が見込める立地ならば、収支のバランスが成り立ちます。
駅前や繁華街などの「高回転立地」
ランチやディナーのピークタイムに短時間で多くのお客さんを回転させられる立地であれば、高家賃でも利益が出しやすくなります。例えば、都市部の駅前でランチ客が途切れず来店するような立地で、月商500万円を超えるのであれば、家賃が50万円でも採算を合わせることができるでしょう。
客単価と回転率のバランスが重要
高家賃でも収益を出すためには客単価を上げるか、回転率を高める必要があります。居酒屋やラーメン店、カフェなど業態によって戦略は異なりますが、単に「人通りが多いから」と安易に高家賃物件を選ぶのではなく、自店の業態と照らし合わせて計算することが重要です。
家賃を抑えるための物件選びのコツ
家賃が高くても成功できる物件を視野に入れる一方、家賃を抑えられる物件を選ぶのも選択肢の一つです。家賃を抑えるためには、立地の見極めが重要です。以下のような視点から物件を探してみると、掘り出し物に出会えることもあります。
路地裏や2階物件も選択肢に
集客のためには、必ずしも1階路面店である必要はありません。SNSや口コミで集客できる力がある場合は、路地裏やビルの2階でも十分な集客が可能です。路地裏や空中階は家賃が割安になることが多く、利益率を高めやすいです。
居抜き物件で初期費用を抑える
前の店舗の内装や設備が残っている「居抜き物件」は、内装工事費や厨房設備の費用を抑えられるため、初期投資の回収が早まります。レイアウトに制約が出てしまうといったデメリットもありますが、コスト面、とくに初期費用が大幅に抑えられる点は大きなメリットといえるでしょう。
家賃以外の費用も契約前にチェックを
意外と見落としがちなのが、「共益費」や「保証金」など家賃以外のコストです。月額家賃だけでなく、初期費用や退去時の原状回復費用も含めたトータルの負担を確認しておくことが重要です。
また、賃貸契約には「更新料」や「定期借家契約」など、将来的に費用が発生する要素が含まれている場合もあります。可能であれば、不動産に詳しい専門家に相談したり、契約内容を丁寧に読み込んだ上で判断しましょう。
売上予測とシミュレーションの重要性
物件を選ぶ際は、開業前に売上シミュレーションを行うことが非常に大切です。
例えば、
・1日何人来店すれば、月商はいくらになるのか
・客単価がいくらで、どれだけ利益が出るのか
・売上から原価・人件費・家賃を差し引いて、どれだけの粗利が残るのか
これらを事前にシミュレーションすることで、現実的な家賃ラインが見えてきます。数字をもとに「この家賃でやっていけるか?」を判断していくことが、安定した経営につながります。
まとめ|家賃と売上のバランスが成功のカギ
飲食店経営では、家賃はただの固定費ではなく「投資」とも言える存在です。高ければ危険、安ければ安心という単純なものではなく、「自店舗の売上とのバランス」「立地との相性」「業態との親和性」を総合的に判断することが求められます。
以下のポイントを押さえておくと、家賃に悩まされない経営がしやすくなります。
・家賃は月商の8〜10%以内を目安に
・FLR比率で経営全体の健全性を確認
・物件選びでは立地・階層・初期費用を総合判断
・売上シミュレーションで実現可能性を検討
・家賃以外の費用にも注意する
飲食店経営は「物件選び」で7割が決まるとも言われます。慎重に、かつ戦略的に家賃と売上のバランスを考えることで、安定した運営が目指せるはずです。