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ノウハウ(M&A)

あなたの会社はどれくらいの価値がある?企業価値の計算法を学ぼう



企業価値とは何か?その基礎知識を理解しよう

企業価値の定義と重要性

 企業価値とは、企業の経済的な価値を数値化したものです。企業の資産、収益力、将来性などを総合的に評価し算出されます。M&Aにおいては、買収や売却の価格交渉の基礎となる重要な指標です。

 また、企業価値の計算は経営資源の最適配分や、投資家・株主への説明責任を果たす上でも重要です。自社の価値を正確に把握することは、競争優位性を確立し、持続的な成長を実現するための基盤となるでしょう。

企業価値と株式の関係

 企業価値と株式価値は密接に関連しており、企業価値は、株式価値に負債価値を加えたものとして計算されるのが一般的です。

 M&Aの場面では、企業価値が交渉の基準になることが多く、例えば非上場企業の場合、明確な時価が存在しないため、企業価値を適切に評価することで株式価値を算出する手法が採用されます。

企業価値の計算で使われる主な方法

収益アプローチ:収益力で見る評価

 収益アプローチとは、企業の将来的な収益力に着目し、企業価値を評価する手法です。具体的には、将来のキャッシュフローを予測し、それを現在の価値に換算することで企業価値を算出する手法です。代表的な手法としてDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)があり、M&Aにおける企業価値評価で広く用いられています。この方法は、将来の成長性が高い企業や、安定した収益が見込める企業に適しています。

資産アプローチ:資産と負債による評価

 資産アプローチは、企業が保有する資産と負債を基準に価値を求める評価方法です。具体的には、時価純資産を算出する手法がよく採用されます。時価純資産は、保有している資産を現在の市場価格で評価し、そこから負債を差し引いて算出されます。この方法は、特に中小企業のM&Aにおいて基本的な評価手法とされており、現時点の企業の財務的な安定性を正確に把握するのに役立ちます。ただし、収益性や成長性を反映しきれない場合もあるため、他のアプローチとの併用が求められる場面もあります。

マーケットアプローチ:市場価値を基準にする評価

 マーケットアプローチは、同業種や類似した企業の市場価値を基準に企業価値を算定する方法です。類似会社比準法が代表的な手法で、特に上場企業においては市場での株式取引価格を基準に評価を行います。ただし、非上場企業では市場データの取得が難しいため、この方法の適用が制限される場合があります。マーケットアプローチのメリットは、市場のトレンドや業界の相場を反映した現実的な評価額を得られる点です。そのため、特定の業界や規模での比較が重要とされるM&A交渉時に有用です。

 

実際に行われる企業価値の評価手法

DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)の手順

DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)は、企業の将来のキャッシュフローを予測し、それを現在の価値に換算することで企業価値を算出する手法です。M&Aにおける企業価値評価で広く用いられています。具体的には、将来のフリーキャッシュフローを予測し、割引率を用いて現在価値に換算します。DCF法は、企業の収益力や成長性を評価に反映できる一方で、将来予測や割引率の設定には不確実性が伴うため、慎重な検討が必要です。

類似会社比準法の使い方

 類似会社比準法は、対象企業と類似した業種や規模の企業の市場価値を基準に評価を行う手法です。具体的には、株式価値や収益性の指標となる指標(PERやEV/EBITDAなど)を類似会社と比較し、対象企業の価値を推定します。この手法は、業界内の企業価値の相場感を把握するのに役立ち、査定方法として比較的分かりやすい点が特徴です。ただし、非上場企業の評価では、適切な類似企業の選定が難しいことや、業界特有の特性が反映されにくい点が課題となる場合もあります。

時価純資産法での計算例

 時価純資産法は、企業が保有する資産を現在の市場価格で評価し、それから負債を差し引いた金額を基に算出する方法です。例えば、企業が時価で1億円の資産を有し、5,000万円の負債を抱えている場合、時価純資産価値は5,000万円となります。この手法は中小企業のM&Aにおいて頻繁に使用され、企業の保有資産や財務状況を明確に反映できます。ただし、実質的な収益性などの非財務的要因を考慮しにくいため、他の評価方法と併用することが一般的です。

評価手法の組み合わせが必要な理由

 企業価値の評価を正確に行うには、複数の手法を組み合わせることが必要です。それぞれの評価手法にはメリットとデメリットがあり、単一の手法では企業の全体像を捉えることが難しい場合があります。例えば、DCF法では将来の収益力を重視し、時価純資産法では保有資産の実態を反映しますが、それぞれが補完して初めて信頼性の高い企業価値を導き出すことができます。また、M&Aの交渉をスムーズに進めるためには、複数の査定方法を根拠として提示することで、売り手と買い手双方に納得感を生むことができます。そのため、評価手法のバランスと適切な活用が重要です。

 

会社の価値を知ることの意義

 企業価値を把握することは、将来の成長戦略を構築するうえで非常に重要です。企業価値は、その企業が持つ現時点での価値だけでなく、将来的な可能性を数値化した結果とも言えます。たとえば、M&Aを検討する際に企業価値が正確に把握できれば、適正な取引額を設定でき、交渉を円滑に進められるだけでなく、買い手や投資家に対して自社の将来性をアピールする材料となります。また、自社の価値を客観的に確認することで、資本の適正配分や事業戦略の見直しに繋がり、長期的な企業の発展の実現にも繋がると言えるでしょう。