「利益は出ているのにお金がない!」強い「財務体質」と「事業資金」の正しい向き合い方

「今期は過去最高の売上だ! 利益もしっかり出ているぞ」 決算書(損益計算書)を見て胸をなでおろしたのも束の間、銀行口座の残高を見て「あれ? なぜこんなに現金がないんだ?」と首を傾げた経験を持つ経営者の方は、意外と多いのではないでしょうか。
企業経営において「売上」や「利益」は非常に重要ですが、それと同じくらい、あるいは時にそれ以上に重要なのが「財務体質の強化」と「事業資金(キャッシュ)の管理」です。
人間の身体に例えるなら、売上や利益は「日々のエネルギー摂取と消費」であり、財務体質は「病気になりにくい基礎体力」、そして事業資金は「全身を巡る血液」と言えます。どれだけ筋肉(営業力)があっても、血液(資金)の巡りが止まれば、企業は倒れてしまいます。
本コラムでは、経営の要である財務体質と事業資金について、実践的な視点から紐解いていきます。
1. なぜ「黒字」でも資金繰りに苦しむのか?
「利益=手元の現金」ではない。これが、多くの経営者を悩ませる最大の要因です。
損益計算書(PL)上では「売上」として計上されていても、実際の入金が翌月、あるいは数ヶ月先であれば、その間の経費や仕入れ代金、人件費は手元の現金から支払わなければなりません。この入金と支払いのタイムラグが、事業資金を圧迫します。
これが極端に悪化すると、帳簿上は黒字であるにもかかわらず、支払いに充てる現金が底をついて倒産してしまう、いわゆる「黒字倒産」という悲劇を引き起こします。
売上を上げる(攻め)ことばかりに目が行き、資金を回す(守り)がおろそかになっている企業は、常にこの黒字倒産のリスクと隣り合わせにいると言っても過言ではありません。
2. 「強い財務体質」とは、筋肉質なカラダづくり
では、財務体質が強い会社とはどのような会社でしょうか。無借金経営であれば良いのかというと、必ずしもそうではありません。
真に強い財務体質とは、不況やパンデミックなどの外部環境の変化に耐えうる自己資本の厚さと事業投資に必要な資金を、適切な条件で調達できる信用力を兼ね備えた状態を指します。
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自己資本比率の向上: 負債(返す必要があるお金)と純資産(返す必要がないお金)のバランスです。利益をコツコツと内部留保として蓄積し、自己資本比率を高めていくことは、企業という身体に「基礎体力(筋肉)」をつける作業に他なりません。
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適切な借入の活用: 「借金=悪」ではありません。低金利で事業資金を調達し、それを自社の利益率以上のリターンを生む事業に投資できるのであれば、それは企業を成長させる良質な負債です。無借金にこだわるあまり、成長への投資機会を逃してしまうのは本末転倒です。
不要な固定費を削減し、使っていない機械や不動産、滞留在庫などの遊休資産を現金化して身軽になること。これが財務の「筋肉質なカラダづくり」の第一歩です。
3. 事業資金を枯渇させない鉄則
事業資金を円滑に回すためには、日々の業務フローの中にお金の出入りを意識したルールを組み込む必要があります。
資金繰りの大原則:「回収は早く、支払いは遅く」
もちろん、取引先への支払いを不当に遅らせることは信用問題に関わりますが、契約の範囲内で支払いサイトを最適化することは立派な財務戦略です。逆に、売掛金の回収が遅れている取引先がないか、現場の営業担当者任せにせず、経営陣がしっかりとモニタリングする仕組みが不可欠です。
また、事業資金には大きく分けて「運転資金(日々の経費)」と「設備資金(新たな投資)」があります。短期的な運転資金を長期の借入で賄ったり、逆に長期で回収すべき設備投資を短期の資金で賄ったりすると、資金繰りのバランスが一気に崩れます。資金の使い道と調達の期間を一致させることも、重要なポイントです。
4. 晴れの日に傘を借り、雨の日に備える
金融機関との付き合い方も、事業資金の安定に直結します。 よく言われる格言ですが、銀行融資は「晴れの日(業績が良い時)に傘を借りて、雨の日(業績が悪化した時)に備える」のが鉄則です。
資金が底をつきそうになってから慌てて銀行に駆け込んでも、足元を見られるか、最悪の場合は融資を断られてしまいます。手元に十分な現金(理想は月商の3〜6ヶ月分)がある時にこそ、あえて融資を受けて手元流動性を高め、計画通りに返済することで金融機関との「信用」という見えない資産を築いておくのです。
まとめ:強い「守り」があってこそ、最大の「攻め」ができる
経営において、売上を伸ばすことは非常にエキサイティングであり、華やかな部分です。一方で、貸借対照表(BS)やキャッシュフロー計算書(CF)と向き合い、財務体質を改善していく作業は、地味で根気のいる作業かもしれません。
しかし、盤石な財務体質と潤沢な事業資金という「強い守り」があって初めて、企業は大胆な新規事業やM&A、人材採用といった「最大の攻め」に打って出ることができます。
「利益は出ているのに、お金がない」。もしそんな思いが頭をよぎったら、それは会社が財務体質を見直すタイミングを教えてくれているサインです。次回の役員会議では、売上目標だけでなく、自社のキャッシュフローや自己資本比率についても、ぜひじっくりと議論してみてはいかがでしょうか。
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