【店舗売却・居抜き】トラブル回避の必須知識!造作譲渡契約で揉めないための3つの鉄則

飲食店の閉店や移転に伴う「店舗売却」。そして、初期費用を劇的に抑えて新店をオープンできる「居抜き」での出店。この両者にとって、お互いのメリットを最大化する最高の取引手法が、店舗の内装や設備をそのまま引き継ぐ「造作譲渡」です。
スケルトンに戻す多額の原状回復費用を免れたい売り手と、数百万円もの内装工事費を浮かせて即営業したい買い手。双方の思惑がピタリと一致する素晴らしい仕組みですが、実務の現場では「こんなはずじゃなかった!」というトラブルが後を絶ちません。
その原因のほとんどは、売り手と買い手が結ぶ「造作譲渡契約書」のツメの甘さにあります。今回は、居抜き物件の取引において絶対に外してはいけない「動産範囲」「現状有姿」「引渡し」という3つの超重要ポイントを、現場のリアルな失敗談を交えながら分かりやすく解説します。
本題のトラブル対策に入る前に、「そもそも居抜き売却で本当に原状回復を回避できるの?」「大家さんへの切り出し方は?」といった基本的な仕組みを知りたい方は、まずこちらのコラムからご覧いただくことをおすすめします。
退去時に強い味方!原状回復が不要となる「居抜き売却」の仕組みと活用法
「えっ、冷蔵庫は持って帰るの?」動産範囲のズレが最大の火種
造作譲渡において最も揉めるのが、「どこからどこまでが譲渡の対象なのか」という動産範囲の認識のズレです。
買い手は「お店にあるものは、お皿一枚からエアコンまで全部そのまま使える」と思い込んでいます。しかし売り手からすると、「あの高級エスプレッソマシンと、知り合いから譲ってもらった製氷機だけは新店舗に持っていく」と考えているケースは珍しくありません。この「言った・言わない」「あると思っていた・ないなんて聞いていない」が、引き渡し直前に大爆発するのです。
さらに恐ろしいのが「リース品」の存在です。店舗にあるPOSレジや大型冷蔵庫、食洗機などが実はリース契約中のものであった場合、売り手に所有権がないため、そもそも勝手に売買することができません。これを知らずに譲渡契約を結んでしまうと、後からリース会社に回収されてしまい、買い手はオープン直前にパニックに陥ります。
これを防ぐための唯一にして最強の防衛策は、契約前に「造作譲渡目録(リスト)」を必ず作成することです。厨房機器の型番や年式、客席のテーブルや椅子の数まで細かくリストアップし、さらに「これは残す」「これはリース品だから引き継ぎ手続きをする」「これは売り手が持ち帰る」といったステータスを図面や写真付きで可視化します。面倒な作業ではありますが、このリスト作りを怠ると後で何倍もの代償を払うことになります。
魔法の言葉「現状有姿(げんじょうゆうし)」に隠されたリスク
造作譲渡契約書には、ほぼ100%の確率で「本物件は現状有姿にて引き渡すものとする」という一文が入っています。不動産やM&Aの業界でよく使われるこの「現状有姿」という言葉、要するに「今あるがままの状態で渡します。後から壊れても一切責任は取りません(契約不適合責任の免責)」という、売り手にとっての免責条項なのです。
店舗売却をする売り手の本音としては、「中古品を格安(あるいは無償)で譲るのだから、後から文句を言われても困る」というのが正直なところでしょう。しかし、買い手としてはたまったものではありません。「現状有姿に同意して鍵をもらい、いざオープン前日に厨房機器の電源を入れたら、エアコンも冷蔵庫も動かない……」となれば、目も当てられません。修理代だけで数百万円が飛び、居抜きのメリットが完全に吹き飛んでしまいます。
この悲劇を回避するためには、契約書に捺印する前の「動作確認」が絶対条件です。売り手と買い手が一緒に店舗へ出向き、水は出るか、お湯は沸くか、冷蔵庫は冷えるか、エアコンから異臭はしないか、一つひとつ電源を入れて確認します。もしその時点で壊れているものがあれば、「これは壊れているので無償で譲渡する」「売り手の費用で修理してから引き渡す」など、事前に取り決めを交わすことができます。現状有姿という言葉を盾にしたトラブルを防ぐには、現場での地道な確認作業しかありません。
大家さんを巻き込んだ「引渡し」のタイミング問題
最後に立ちはだかるのが、造作の「引渡し」に関するスケジュールの問題です。造作譲渡契約は、売り手と買い手の2者間だけで「100万円で設備を売買しましょう」と合意して完結するものではありません。そこには必ず、その店舗物件の「大家さん(賃貸人)」という絶対的な存在が関わってきます。
実は、いくら売り手と買い手で造作譲渡の合意ができても、大家さんが「新しいテナントさん(買い手)とは賃貸借契約を結びません」と判断してしまえば、その造作は何の価値も持たなくなってしまいます。
そのため、造作譲渡契約と、大家さんとの賃貸借契約は、完全に連動していなければなりません。実務上は、造作譲渡契約書の中に「買い手と大家さんとの間で建物の賃貸借契約が成立しなかった場合は、この造作譲渡契約も白紙撤回(無効)とする」という「停止条件」を必ず盛り込みます。
また、引渡しのタイミングも要注意です。売り手が家賃を払う最終日と、買い手が家賃を払い始める初日、そして大家さんが承諾した造作の引き渡し日。この3つのタイミングを綺麗にパズルで合わせないと、「鍵はもらったけど、まだ前のオーナーの荷物が残っていて内装工事に入れない」「空家賃が発生してしまった」といった無駄なコストやトラブルが発生します。店舗売却をスムーズに進めるには、大家さんや管理会社を巻き込んだ綿密なスケジュール管理が命なのです。
契約書は、次なる挑戦への「お守り」である
店舗売却も、居抜きでの新規出店も、経営者にとって大きな決断であり、新しい挑戦の第一歩です。だからこそ、その足元をすくわれないための「造作譲渡契約」には、細心の注意を払わなければなりません。
「動産範囲をリスト化して明確にする」「現状有姿の言葉に甘えず動作確認をする」「大家さんの承諾と引渡しのタイミングを合わせる」。この3つの鉄則を守るだけで、居抜き取引におけるトラブルの大部分は未然に防ぐことができます。
契約前に細かな条件をすり合わせることは、決して相手への不信感からではありません。後々の無用なトラブルを未然に防ぎ、双方が納得して円滑に事業を引き継ぐための「必要不可欠なプロセス」です。
これから店舗売却や居抜き物件の契約を控えている経営者・担当者の皆様は、ぜひ今回のポイントを念頭に置き、自社をリスクから守る確実な造作譲渡契約を締結してください。
関連記事
契約時のトラブルを未然に防ぐ知識を身につけたら、次は「いかに自社の店舗設備を高く評価してもらうか」という交渉戦略が必要です。
買い手から少しでも高値で買い取ってもらい、売却益を最大化するための「事前の準備」と「具体的な交渉テクニック」について、以下のコラムで詳しく解説しています。店舗売却を成功させたい経営者様は、ぜひあわせてご覧ください。
「4C’s事業承継サービス」とは
4C’sパートナーズが提供する居抜き物件の出店・居抜き売却・M&Aによる事業承継を検討する方に向けて、最適な支援企業をご紹介するサービスです。
複数の支援企業を比較・検討できるため、目的や状況に応じた最適なパートナー選びが可能です。
