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飲食店の立地は駅近か駅遠か?メリット・デメリットと業態別の選び方


飲食店の立地は駅近がいいのか、駅遠がいいのか?
駅近の店は通行人が自然に流れ込み、短時間でさっと食べて次の予定へ——人流×回転率で稼ぐ設計がハマります。
いっぽう駅遠は「わざわざ行く理由」を用意できれば、滞在は長く、体験は濃くなり、目的来店×体験価値で客単価とLTV(顧客生涯価値)が伸びていく。

つまり立地の本質は、駅近=回転で稼ぐ/駅遠=目的来店と体験で単価とLTVを積むという戦い方の違いです。結局のところ優劣ではなく、業態(滞在時間)・客単価・提供スピードに、回転率と予約率という数字がどれだけ乗るかで決まります。
本コラムでは駅近で効く「席回転×提供速度×昼需要」の作り方と、駅遠で効く「予約率×世界観×再来店」の積み上げ方を、損益分岐とKPIの置き方から具体的に解きます。

駅近の強みと弱み

メリット
  • 人流が安定し、新規流入が自然発生しやすい
  • 雨天・猛暑でもアクセス負担が小さく、ドタキャン率が低い
  • 昼ピークが取りやすく、薄利多売・高回転に向く
デメリット
  • 家賃・共益費・看板料が高く、損益分岐が上がる
  • 競合密度が高く、差別化の難易度が上がる
  • 匂い・煙・深夜営業の制限、看板規制など実務制約が多い

こんな業態に相性◎:立ち食い/ラーメン/うどん・そば/テイクアウト専業/ランチ強い定食/バルや立ち飲み(短時間滞在×高回転)

 

駅遠の強みと弱み

メリット
  • 坪単価が抑えられ、広さ・駐車場・内装に投資しやすい
  • 予約・リピート中心で、客単価とLTVを積み上げやすい
  • 体験価値(景観・焙煎・工房併設等)でストーリーを作りやすい
デメリット
  • 自然流入が少なく、集客は設計しないと動かない
  • 天候・季節・イベントの影響をモロに受けやすい
  • 配送/人員の移動コストが上がり、シフト設計が難しい

こんな業態に相性◎:ベーカリー&カフェ/焼肉・寿司・フレンチ等の予約型/ファミリー向け/グランピング・ブランチカフェ/ロースタリーやブルワリー併設(滞在時間が長い×体験重視)

数字で考える:損益分岐の“作り方”

  • 家賃比率は目安で売上の8〜12%。駅近は高めに出やすい分、回転率×客数で越える設計が前提。
  • 駅遠は家賃差額を広告・写真・SNS運用・予約導線・駐車場に回し、目的来店の母数を積む。
  • 分岐の式:損益分岐売上=固定費÷(1−原価率−販促/配達手数料率)。駅近は固定費(家賃)高→回転で粗利を積む、駅遠は販促投資を上げても客単価×再来店で吸収。
指標の置き方
  • 駅近:席回転/時、FLコスト、雨天時の来客下振れ率、平均滞在時間
  • 駅遠:予約率、再来店比率、客単価、駐車場回転、SNS→予約転換率

駅近と駅遠では勝ちやすい“時間”が違う

  • 駅近:平日ランチが主戦場。会社員・通勤客を短い導線×速い提供で集客。夜は0次会/2次会の受け皿に。
  • 駅遠:週末・夕方〜夜が本番。家族/カップル/目的来店に合わせ、席間・音・照明・滞在体験を磨く。

集客とメニューの作り分け

駅近の戦い方
  • ファサード>SNS。看板・暖簾・ショーケースで「3秒で分かる」打ち出し。
  • メニューは即決型(写真・価格・名物1〜3品を大きく)。
  • クーポンは初回来店の壁を下げる小粒で。回転を落とす大型割引は避ける。
駅遠の戦い方
  • SNSと検索が主導線。ビジュアルと物語(素材・仕込み・景観)で“行く理由”を作る。
  • 予約導線の一本化(電話/フォーム/DMの分散を避ける)。
  • メニューは体験軸(ペアリング、コース、限定、キッチンが見える仕掛け)。テイクアウト/ECも組み込む。

業態別・ざっくり相性マップ

  • ラーメン/立ち食い:駅近◎(回転×視認)。駅遠でやるなら限定・製麺可視化など物語を。
  • カフェ/ベーカリー:駅遠◎(滞在×駐車場×世界観)。駅近はテイクアウト強化で回転勝負。
  • 焼肉/寿司/コース料理:駅遠◎(予約×単価)。駅近は少人数・短時間のセットで戦う。
  • 居酒屋/バル:駅近◎(0次/2次需要)。駅遠は大型席と運転者対応(ノンアル/送迎/駐車)を用意。

物件・契約の見逃すと痛い落とし穴

  • 駅近:看板位置・サイズ・点灯時間の権利関係、匂い/煙のダクト要件、深夜営業可否。ゴミ置場・仕込み動線も確認。
  • 駅遠:用途地域と近隣同意、駐車場区画の確保(出入り口の見え方)、バス停/交差点からの視認。
    どちらも、減額交渉の可否(フリーレント/内装持分/造作譲渡)は初期合意で決まります。迷う前に条件表に書いて交渉の土台にしましょう。

よくある誤解

  • 「駅近=必ず勝てる」ではない:回転設計と人件費が追いつかなければ、家賃で沈む。
  • 「駅遠=広告費が重い」だけではない:家賃差額を勝ち筋に再配分できれば、粗利は安定。
  • 「テイクアウトは駅近だけの武器」ではない:駅遠こそ予約前後の“もう一品やECと相性が良い。

オープン前チェックリスト

  1. 客単価×回転で駅近の家賃を超えられる根拠は?
  2. 駅遠なら、予約率(目標)とその流入チャネル設計は?
  3. 立地に合わせた提供スピード/席間/滞在時間の設計は済んだか?
  4. 看板・ダクト・駐車場など非グルメ要素の制約は網羅したか?
  5. 損益分岐売上と開業後30日・60日・90日のKPIをいくつにするか?

行動に落とす今日の一歩

  • 候補物件を駅近1件・駅遠1件に絞り、同じフォーマットで家賃比率・回転仮説・導線を比較。
  • 立地に合わせて名物3品と写真(3秒で伝わる)を先に決める。
  • 駅遠で勝つなら、予約導線の一本化と駐車場の案内画像を先に用意。

まとめ

駅近は“人流×回転”、駅遠は“目的来店×体験”。
どちらを選んでも、数字(家賃比率・分岐・KPI)→導線(看板/予約)→オペ(速度/滞在)の順で設計すれば、立地は“制約”ではなく“武器”になります。

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