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ノウハウ(M&A)

MBO(マネジメント・バイアウト)とは|目的・メリット・流れの基本を解説

MBOとは?なぜいま選ばれるのか

MBO(マネジメント・バイアウト)とは、経営陣が自社株を取得して経営権を握り、必要に応じて非公開化へ進むことで、中長期の戦略を機動的に実行するための手法です。
四半期の株価や開示対応に追われると、再投資や組織の立て直しは後回しになりがちです。MBOは、経営の意思決定を短期最適から解放し、商品・人材・仕組みへの投資を計画的に回すための選択肢です。

生まれる価値の言語化

MBOの目的は「事業の地力に合わせて、意思決定を速くし、将来への投資を継続すること」。親子上場の解消や事業承継の文脈でも有効です。従業員には方針がぶれにくい安心感を、顧客には品質・サービス改善への長期コミットメントを示せます。重要なのは、誰にどんな価値をもたらすMBOなのかを明確に言語化しておくことです。

資金はLBOを軸に組み立てる

実務では、経営陣がSPC(買収目的会社)を設立し、自己資金にLBOローンやメザニン、必要に応じてPEファンド出資を組み合わせて資金を用意します。返済原資は将来のキャッシュフローです。だからこそ、金利前提やコベナンツ、運転資本の季節性まで織り込んだ現実的な資金計画が欠かせません。上場会社であればTOBを公表し、成立後は完全子会社化と上場廃止の手続きを進めます。

MBOのメリットとリスク

MBOの強みは、経営陣と株主の利害が一致し、意思決定が速くなること。非公開下では競合に手の内を見せにくく、大胆な再編もやりやすい。一方で、借入に伴うレバレッジリスクは無視できません。業績が想定を下回れば返済負担が重くなります。また買い手が経営陣であるため、利益相反の疑念が生じやすい点も論点です。ここは、第三者算定や特別委員会、フェアネス・オピニオン等を整え、少数株主保護と情報遮断の運用を徹底することで乗り越えます。要するに、自由度の獲得と引き換えに、これまで以上の資金規律と透明性を引き受けるのがMBOです。

実行の流れ

最初に3〜5年の事業計画と資金計画を固め、金利上昇や需要下振れのストレステストを先に当てます。次にストラクチャーを設計し、財務・法務・税務・人事・IT/サイバーのデューデリジェンスへ。取締役会と特別委員会の判断を経てTOBを公表し、成立後は上場廃止の手続きを進めます。クロージング後の初日から100日は実行力が勝負。指揮命令系統、権限と報酬、在庫・粗利・現金創出力といった基礎KPIのチューニングに集中します。KPIは欲張らず少数精鋭にし、週次で可視化して改善を回すのがコツです。

成功の条件は数字・人・プロセス

成功の鍵は三つに集約されます。

1.キャッシュフローの筋:運転資本の季節性まで踏まえ、返済と投資が両立する数字になっているか。
2.キーマンのリテンション:幹部・現場責任者に報酬・権限・株式インセンティブを適切に設計し、1年後もチームが機能しているか。
3.公正手続の担保:第三者算定・フェアネス・オピニオン、情報遮断の運用を含め、少数株主に説明できる水準を満たしているか。

この三点が揃えば、レバレッジは資本効率を高める道具として機能します。

まずやるべき情報の整理

まずは「MBOの目的」「3〜5年のCF計画と想定借入条件」「社員・顧客・取引先への影響」をA4一枚にまとめましょう。次に、TOB〜上場廃止までの主要マイルストーンと、100日プランのKPIを4つだけ選ぶ。ここまで描ければ、経営会議の議論は一気に建設的になります。MBOとは、自由度を手に入れる代わりに自ら規律を受け入れる決断です。目的、数字、プロセス――この三つがそろったとき、マネジメント・バイアウトは企業をもう一段強くするための確かな選択肢になります。

FAQ

Q. MBOとLBOの違いは?
MBOは「買い手が経営陣」である取引形態、LBOは「将来のキャッシュフローで返済する資金調達手法」。MBOでLBOを用いることが多い関係です。

Q. 上場会社のMBOで重視される点は?
価格の妥当性(第三者算定・フェアネス・オピニオン)、少数株主保護、情報遮断の運用、TOB後の上場廃止プロセスです。

Q. 事前に用意したい資料は?
3〜5年のCF計画、想定借入条件(金利・年限・コベナンツ)、運転資本の季節性、主要KPIと100日プランの素案が出発点になります

 

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