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ノウハウ(M&A)

M&A売却の成功は「査定額」では決まらない 最高値より「相性」と「継続性」を優先すべき理由

経営者にとって、手塩にかけて育てた会社を手放すM&Aの売却は、人生最大の決断といっても過言ではありません。そんな時、どうしても最初に目が向いてしまうのがM&Aの査定金額ではないでしょうか。「自分の会社がいくらで売れるのか」という数字は、経営者としての通信簿のように感じられ、1円でも高く評価してくれる相手を選びたくなるのが人情というものです。

しかし、多くのアドバイザーが口を揃えて言い、そして多くの元オーナーが後悔とともに語るのは「最高値の提示が、最良の売却先とは限らない」ということです。今回は、数字の裏に隠された「相性」と「継続性」という、M&A成功の真の鍵について深掘りしていきましょう。

高額なM&A査定に潜む罠

インターネットで「M&A 査定」と検索すれば、簡易的なシミュレーターから専門家の個別診断まで、さまざまなサービスが出てきます。確かに、自社の市場価値を知ることは重要です。しかし、ここで注意しなければならないのは、査定額はあくまで入口の数字でしかないという点です。

正直なところ、初期段階で他社よりわざと高い査定額を提示し、オーナーの関心を引こうとする買い手や仲介会社もゼロではありません。しかし、いざ詳細な調査(デューデリジェンス)が始まると、あれこれと理由をつけて金額を削りにくる、いわゆる後出しジャンケンのようなケースも散見されます。

また、無理をして高値で買い取った相手は、買収後にそのコストを回収しようと、現場に過度な利益追求を強いる傾向があります。その結果、これまで大切にしてきた社風が壊れ、従業員が次々と辞めていく……。そんな結末を迎えてしまったら、たとえ通帳に高額な現金が残ったとしても、オーナーの心には「売らなければよかった」というしこりが残ってしまうことでしょう。

関連記事:売却後に後悔しないために

実際にオーナーの手を離れた後、会社や従業員の環境はどう変化するのでしょうか?「金額」だけで決めてしまった際のリスクと、理想的な引き継ぎの姿をこちらの記事で解説しています。

M&Aの「その後」はどう変わる? 期待と不安を現実に変えないための新常識

結局は人間と文化の相性がすべて

M&Aの売却を成功させるために、何よりも優先すべきは、買い手企業との相性です。これは単に社長同士の気が合うという話だけではありません。企業のDNA、つまり「仕事に対する価値観」や「意思決定のスピード感」が合うかどうかが極めて重要です。

例えば、ボトムアップで自由闊達な社風の会社を、超中央集権的で規律に厳しい大企業が買収したとしましょう。制度やシステムは整うかもしれませんが、現場の従業員は息苦しさを感じ、本来の強みであった創造性は失われてしまいます。

売却先を選ぶ際には、ぜひ一度、相手企業の現場を見せてもらう、あるいは実際に統合を経験したことがある企業の元オーナーに話を聞いてみることをお勧めします。スペック表(財務諸表)には表れない、その会社が持つ空気感を肌で感じる。これこそが、失敗しない売却先選びの第一歩です。

継続性がオーナーの引退後を豊かにする

経営者がM&Aを考える際、心のどこかにあるのは「自分がいなくなった後も、この会社を存続させてほしい」という願いではないでしょうか。だからこそ、売却価格よりも事業の継続性に重きを置くべきなのです。

買い手企業が、あなたの会社を「ただの利益を生む装置」として見ているのか、それとも「自社の成長に不可欠なピース」として尊重しているのか。その違いは、買収後の事業計画(PMI)の提案内容に如実に表れます。

既存の取引先との関係をどう維持するのか、ブランド名は残るのか、そして何より従業員の雇用条件や処遇はどうなるのか。これらの継続性に関する約束が曖昧なまま、金額だけで話を進めるのは非常に危険です。逆に、多少査定額が低かったとしても、自社の事業を深く理解し、さらなる成長のビジョンを具体的に描いてくれる相手であれば、結果として従業員の幸福度は高まり、社会的なインパクトも大きくなるはずです。

幸せなM&Aの売却に向けた「心の査定」

最後に、これからM&Aの売却を検討される皆さんに意識していただきたいのは、自分自身の「譲れない軸」を明確にすることです。

「従業員の生活を守ること」が最優先なのか。「自分の名前を冠したサービスが100年続くこと」なのか。あるいは「全く新しい資本の力で、事業を海外へ羽ばたかせること」なのか。この軸がブレていると、高い査定額を提示されるたびに心が揺れ、最終的に「こんなはずじゃなかった」という決断を下してしまいがちです。

M&Aは、会社を捨てることではなく、次のランナーにバトンを繋ぐ行為です。そのバトンを、どのくらいのスピードで、どんな想いで受け取ってくれるのか。数字というドライな指標だけでなく、感情や信頼というウェットな部分を大切にすること。それが、オーナーにとっても、従業員にとっても、そして顧客にとっても「三方よし」のM&Aを実現する唯一の道なのです。

高値に惑わされず、相性を見極め、継続性を信じられるパートナーを選ぶ。そんな「人」にフォーカスしたM&Aこそが、令和の時代の経営者が目指すべき最適解といえるでしょう。

 

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こうした「相性」や「継続性」を重視した売却先探しは、経営者一人の力では限界があります。そこで重要になるのが、あなたの軍師となる「M&A仲介会社」の存在です。

残念ながら、業界内には成約手数料だけを目的とし、強引にマッチングを進める業者が存在することも事実です。国が定めた基準をクリアしているか、本当に誠実なサポートが期待できるか、プロの目線でパートナーを選び抜くことが、納得のいくM&Aへの最短ルートとなります。

その仲介会社、本当に大丈夫? M&A支援機関登録制度を起点に選ぶM&Aパートナー

 

 

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