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ノウハウ(M&A)

【完全理解】不動産M&Aとは?通常の不動産売買との違い、メリット・デメリットを徹底解説

 

「自社の不動産を売却したいが、税金が高額で手元に資金が残らない」

「優良な収益物件を仕入れたいが、取得時の税金やコストを少しでも抑えたい」

このような経営者や投資家の課題を解決する手法として、近年不動産業界で大きな注目を集めているのが「不動産M&A」です。

M&A(企業の合併・買収)と聞くと、事業承継や大企業の戦略をイメージする方が多いかもしれません。しかし、不動産を保有する法人を対象としたM&Aは、通常の不動産売買にはない強力な「節税効果」や「コスト削減効果」をもたらすため、中小企業の経営者や資産管理会社の間で非常に有効な選択肢となっています。

本コラムでは、「不動産M&Aとはそもそも何か」という基礎知識から、通常の不動産取引との違い、売り手・買い手双方のメリット・デメリット、そして具体的な手続きの流れまでを分かりやすく解説します。

 

不動産M&Aとは?

不動産M&Aとは、端的に言えば「不動産そのものを売買するのではなく、不動産を所有している『会社(法人)の株式』を売買する手法」のことです。

通常、企業が保有する不動産を売却する場合、土地や建物の所有権を買い手に移転します。一方、不動産M&Aでは、不動産の名義は対象企業のままにしておき、その企業の経営権(株式)を買い手に譲渡します。

対象となるのは、主に以下のような企業です。

  • 不動産賃貸業を主業とする資産管理会社
  • 自社ビルや工場などの事業用不動産を保有している企業
  • 不動産以外の事業を停止・売却し、実質的に不動産のみが残っている企業

「なぜ、わざわざ会社ごと売買するのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、その最大の理由は「税務上の圧倒的なメリット」にあります。次の章で、通常の不動産売買との違いを詳しく見ていきましょう。

 

「通常の不動産売買」と「不動産M&A」の比較

不動産M&Aの本質を理解するためには、通常の不動産取引と比較するのが最も近道です。取引対象や、課税される税金の種類がどのように変わるのか、以下の表にまとめました。

比較項目 通常の不動産売買 不動産M&A(株式譲渡)
取引の対象 不動産(土地・建物) 法人の株式(経営権)
売り手にかかる税金

法人税等(約30%〜34%)

+個人の所得税(最高55%

株式譲渡益に対する申告分離課税

(一律 20.315%

買い手にかかる税金

不動産取得税、登録免許税、

建物の消費税が発生する

不動産取得税、登録免許税、

建物の消費税が発生しない

手続きの手間 比較的シンプル(登記移転等) 複雑(財務・法務の徹底調査が必要)
引き継ぐ内容

不動産そのもの

(瑕疵担保等あり)

不動産を含む法人の資産・負債・契約すべて

 

表から明らかなように、不動産M&Aは取引の対象が「不動産」から「株式」に変わることで、適用される税制が根底から変わります。これが売り手・買い手双方に大きな金銭的メリットをもたらす源泉となります。

 

売り手から見た不動産M&Aのメリット・デメリット

法人のオーナー(経営者)が自社の不動産を手放す際、不動産M&Aを選択することでどのような影響があるのでしょうか。

売り手のメリット

① 手元に残るキャッシュが最大化する(二重課税の回避)

最大のメリットは、税負担を大幅に軽減できる点です。

法人が不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、まず法人税等(約30%強)が課税されます。さらに、残った利益をオーナー個人が配当や退職金として受け取る際、最大55%の所得税・住民税が課せられます。これを「税金の二重課税」と呼びます。

一方、不動産M&A(株式譲渡)の場合、オーナーが保有する株式を売却するため、利益に対して一律「20.315%」の申告分離課税が適用されるのみです。数千万〜数億円単位で手取り額が変わるケースも珍しくありません。

② 事業承継問題の解決とハッピーリタイア

後継者がいない資産管理会社などの場合、不動産M&Aを活用して会社ごと第三者に譲渡することで、オーナーはまとまった創業者利益を得てリタイアすることができます。法人の解散・清算という煩雑な手続きを回避できる点も大きな魅力です。

 

売り手のデメリット

① 買い手探し(マッチング)の難易度が高い

「不動産を買いたい」というニーズは無数にありますが、「不動産を保有する会社ごと買いたい」というニーズは相対的に少なくなります。特に、本業の業績が悪化している企業や、不要な資産・負債が多く混在している法人の場合、買い手を見つけるのに苦労する傾向があります。

② 手続きに時間と専門知識を要する

M&A取引となるため、一般的な不動産仲介業者だけでは完結しません。M&Aアドバイザー、税理士、弁護士などの専門家を交え、数ヶ月から1年程度の期間をかけて慎重に交渉・手続きを進める必要があります。

 

買い手から見た不動産M&Aのメリット・デメリット

一方、不動産を取得したい買い手企業や投資家にとっても、不動産M&Aは魅力的なスキームです。

買い手のメリット

① 取得時の多額な税金・コストを削減できる

通常の不動産売買では、高額な「不動産取得税」や「登録免許税」が課せられます。さらに、建物部分には10%の「消費税」がかかります。(例:建物価格5億円の場合、消費税だけで5,000万円)。

しかし不動産M&Aの場合、不動産の所有者は対象企業のままであり、所有権の移転は発生しません。したがって、これらの取得関連税や消費税が一切かからないという絶大なコストメリットがあります。

② 許認可や優良な財務履歴を引き継げる

不動産そのものだけでなく、対象企業が保有する「宅地建物取引業」などの許認可や、金融機関との良好な取引実績(借入金利の条件など)をそのまま引き継ぐことができます。新規事業として不動産業に参入したい企業にとっては、時間と信用の大きなショートカットになります。

 

買い手のデメリット

① 簿外債務や偶発債務を引き受けるリスク

会社を丸ごと買収するため、不動産以外の「負の部分」も引き継ぐことになります。例えば、従業員の未払い残業代、過去の税務申告の不備による追徴課税リスク、社会保険料の未納、不動産自体の隠れた瑕疵(土壌汚染やアスベストなど)です。これら貸借対照表に載っていない負債(簿外債務)を引き継ぐリスクが伴います。

② デューデリジェンス(買収監査)の費用と手間

上記のリスクを回避するため、買い手は契約前に公認会計士や弁護士などの専門家に依頼し、対象企業の財務・税務・法務を徹底的に調査します。これをデューデリジェンス(DD)と呼びますが、これに数百万円の費用と数週間の期間を要します。

 

不動産M&Aにおける注意点「会社分割」の活用

「自社ビルは売りたいが、本業の事業はそのまま続けたい」という事業会社の場合、そのままでは不動産M&A(株式譲渡)を行うことができません。

このようなケースでは、「会社分割(カーブアウト)」という手法を用います。

具体的には、現在の会社から「不動産保有事業」だけを切り離して新しい会社(新設会社)を作り、その新設会社の株式を買い手に譲渡します。手続きはより複雑になりますが、このスキームを活用することで、事業会社であっても不動産M&Aの恩恵を享受することが可能になります。

 

不動産M&Aを成功に導くプロセス(流れ)

不動産M&Aは、通常の不動産取引とは異なるステップで進行します。一般的な流れは以下の通りです。

1.専門家への相談・アドバイザー契約

不動産とM&A、双方の知見を持つ専門業者(M&A仲介会社など)を選定し、企業価値の算定(バリュエーション)を行います。

2.マッチング(買い手探し)

企業が特定されない粒度の資料(ノンネームシート)を作成し、買い手候補に打診します。

3.トップ面談・基本合意

売り手と買い手の経営者同士で面談を行い、意向が合致すれば、おおまかな譲渡条件を定めた「基本合意書」を締結します。

4.デューデリジェンス(DD:買収監査)

買い手側の専門家が、対象企業の財務状況や法務リスク、不動産の適法性などを詳細に調査します。

5.最終契約(株式譲渡契約)とクロージング

DDの結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、株式譲渡契約を締結。譲渡代金の決済と株式の引き渡しを行います。

 

まとめ

不動産M&Aは、「手残りを最大化したい売り手」と「初期投資を極力抑えたい買い手」の双方にとって、非常に合理的なメリットを提供する取引手法です。

しかし、その恩恵を享受するためには、税制の正しい理解や、簿外債務リスクを排除するための緻密なデューデリジェンスが必要不可欠です。単なる不動産仲介の知識だけではトラブルに発展する可能性が高いため、法務・税務に精通した専門家のサポートが欠かせません。

保有する不動産の売却や事業承継に悩まれている方、あるいは効率的な不動産投資・事業拡大を検討されている方は、ぜひ「不動産M&A」という選択肢を視野に入れ、専門の機関へ一度相談してみてはいかがでしょうか。

 

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