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ノウハウ(店舗)

飲食店開業の「賃貸」と「開業資金」完全ガイド|物件選び・初期費用・運転資金・資金調達まで

飲食店の開業は、賃貸物件の選び方と開業資金の設計が出発点です。
軸は三つ──賃貸条件を正しく読む、初期費用と3〜6か月分の運転資金を切り分ける、数字で裏づけた事業計画を作る。
この順に、物件チェックの要点と必要資金の考え方、損益分岐・回収期間の出し方までを実務目線で解説します。

1 賃貸物件は「可否・導線・インフラ」でふるいにかける

まず“飲食店可”と明記されている物件を選ぶのが大前提です。次に導線と視認性(駅からの障害、看板の抜け、間口の広さ)を現地で確認。最後にインフラです。排気ダクトの経路、グリストラップ、給排水、電気容量、ガス種、換気量、空調能力をチェックします。
候補が具体的に絞り込まれてきたら、重飲食可否や深夜利用のルール、近隣の匂い・騒音クレーム履歴も管理会社にヒアリング。用途地域・消防・保健所の要件は図面段階で当たり、後戻りを防ぎます。

2 賃貸の初期費用は「契約金+工事外の雑費」まで見積もる

初期費用の主な内訳は、保証金(敷金)・礼金・仲介手数料・前家賃・共益費・保証会社料・火災保険・鍵交換・看板申請などです。
契約書では解約予告期間・短期解約違約金・原状回復範囲・看板設置位置・深夜営業の可否を必ずチェック。可能ならフリーレントで工期を吸収。退去時の原状回復義務は将来のキャッシュアウトなので、スケルトン返しか一部残置かを条文と覚書で明確化しておきます。

3 内装・設備は「居抜きで縮める」か「スケルトンで作る」か

コストと工期を抑えるなら居抜き+造作譲渡が第一候補。既存のダクト・給排水・グリストラップ・客席レイアウトを活かし、造作譲渡金で初期投資が読みやすくなります。
ブランドをゼロから作るならスケルトンも選択肢。ただし厨房ゾーニング・動線・空調を最初に決め、やり直し工事を避けようにしましょう。厨房機器は新品+中古リビルト+リースを使い分け、電気・水・火のボトルネック(ブレーカー容量、給湯、排気抵抗)を先に潰すのが鉄則です。

4 開業資金は「初期費用+運転資金(3〜6か月)」で設計

初期費用だけで資金を組むと開店直後に詰まりがちです。運転資金(家賃、人件費、仕入れ、水光熱、広告、システム、雑費)を最低3〜6か月分プール。
オープン直後は販促と人件費が膨らみやすいので、黒字転換の山を越えるまでの資金余力を確保するのが理想です。家賃の起算日は工事着工日ではなく引渡日や検査完了日に合わせられないか交渉すると安心です。

5 家賃比率・損益分岐を“数字”でとらえる

物件は“雰囲気”ではなく“算数”で選びます。

日商=席数×回転数×客単価
・家賃比率=家賃÷月商(目安8〜10%以内)
・FLコスト=食材原価+人件費(合計50〜55%を目安)
・損益分岐売上=固定費÷限界利益率

これを候補物件ごとに試算し、安全域が広い物件を選定。ランチは回転、ディナーは客単価で稼ぐ戦略に合わせ、席数・卓配置・滞在時間を設計。テイクアウトやデリバリーはアイドルタイムの稼働を埋める補助線に。

6 資金調達は「返済原資を語る資料」が決め手

調達手段は、自己資金・親族借入・金融機関融資(保証協会付)・日本政策金融公庫・リース/割賦・補助金を組み合わせていきます。
審査で効くのは返済原資のロジックです。“創業計画書(市場・競合・強み)/根拠付きの収支予測/資金繰り表/見積・図面/賃貸借契約(案)”を揃え、客単価や原価率の根拠、席効率、回転数、季節変動、販促費の配分まで言語化します。

7 許認可・工期・オープンの逆算

賃貸契約の前に保健所の事前相談、消防設備・防火管理者の要件を確認。
工期は解体→設備配管→躯体補修→内装→什器→検査→引渡→保健所検査の流れで管理。プレオープン→グランドオープンの二段構えにします。ネットの広報はMEO(Googleマップ)を最優先し、営業時間・メニュー・写真・口コミ返信を整備。SNSは仕込み動画や“本日の入荷”で“旬”を打ち出しましょう。

8 コストを抑える実務のコツ(すぐ効く順)

1.居抜き×造作譲渡を最優先で打診(原状回復費を相殺)
2.フリーレントと引渡条件を交渉(看板・残置物の扱いを明文化)
3.相見積は三社以上(内装・設備・看板は分離発注も検討)
4.中古機器は“保証と履歴”重視(冷機・食洗は電気代も確認)
5.メニューの仕込み共通化(ロス削減と人時生産性の両立)
6.内覧会で口コミの種まき(近隣・同業・インフルエンサーを招待)

 

まとめ|「賃貸条件×資金計画×回収設計」を一本の線に

・物件は可否・導線・インフラで一次選別し、契約条項でリスクを削る。
・開業資金は“初期費用+運転資金(3〜6か月)”で余裕を確保。
・家賃比率・FL・損益分岐を数字で管理し、回収の道筋を明文化。
・調達は返済原資の説明力で勝負。資料は“根拠付き”。

結論はシンプルです。居抜き活用・フリーレント交渉・運転資金の厚み・数字で語れる計画の四点を押さえれば、初速のつまずきを避け、堅実に黒字化へ近づけます。次の一手は、候補物件の図面と家賃から損益分岐点と投資回収期間を具体的に試算することです。

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